金魚鉢の寸法

Economic Blog by Sato

私が住むこの地上は、実に広大ですね。
現在把握しきれないほどの国々が存在して、それぞれ色んな言語で話す人がいて、習慣もまったく違います。
とにかく多種多様な人々がひしめき合っています。

そう思うと、私達個人なんて矮小なもの。
取るに足らないごく小さな存在だと、誤解してしまうのも無理はないでしょう。

ですが、それはまったく違います。

貴方が心で感じている世界においては、実は貴方が一番大きいのです。
高層ビルも東京タワーもスカイツリーでさえ、貴方の心がある世界においてはほんの一コマを占めるに過ぎません。
問題なのは物理的な寸法ではなく、その心に占める割合が大切なのです。

自分より大きな事物に相対するとき、人は必要以上に乱暴で卑屈になります。
どうせ影響は小さいからといってゴミを捨てたり、自分だけ儲かればいいと卑怯な振る舞いをします。

自分の貢献できる仕事がないと感じれば、どんどん怠惰になっていきます。
政治や科学の発展など、難しいことは専門家に任せて、ただの傍観者であろうとします。
自身の極小化こそが、多くの人が陳腐化する大きな要因なのです。

☆金魚鉢の世界

貴方は金魚を買い、金魚鉢、水草、砂利を入れて金魚が住める環境を作りました。
金魚は鉢の中を自由に泳ぎまわり、楽しそうにしています。

この小さな世界に対して、貴方は無関心を装うことができるでしょうか？
外の世界にしたように、ゴミを捨てたり、乱暴に扱うことができるでしょうか？

できませんよね。

金魚達が泳ぎ回る小さな集落は、貴方の協力なしには存続できません。
貴方が餌やりをサボったら、三日と経たずみんな死んでしまいます。
きっと、我が子を愛でるくらい、大事に世話することでしょう。

家の窓を開けて、外の世界を見てみましょう。

金魚鉢よりは、ずっと広大ですね。

しかし、遠くに見えるビルや民家は、貴方の眼の中にすっぽり入ります。
多分貴方の手のひらのほうが、ずっと大きく見えるでしょう。

もちろん遠近法の問題ではありますが、実際世の中なんてその程度の存在でしかないのも確か。
貴方自身のサイズと比較するなら、金魚鉢も市町村もそれほど変わりはしません。

会社に行けば、貴方の代わりはいくらでもいると考えているかもしれません。
実際、簡単に代替が利くような仕事をしているのかもしれません。

しかし、貴方の人生には、貴方の代役はいません。
貴方と全く同じように行動してくれる人も、貴方と同じように感じてくれる人もいません。
貴方の存在というのは、貴方が考えている以上に大きいのです。

この世界は、思っている以上に小さくて、
結構個人の行動に左右されます。
ただの平社員がポカやっただけで、会社が倒産することもあります。
一人の研究員が大発見をしたために、株価が急騰することもあります。
どうでもいいように見えて、わりと責任重大なのです。

貴方が生まれた時も現在も地球の大きさは同じです。
その同じサイズを毎年毎年何十にも重ねて増えているのが精神性の大きさになります。
ですから、今目の前に広がるこの世界は一瞬で極めて小さい。
横に引いた今の世界の寸法がIとするなら、それを縦に何十にも重ねた歳月という寸法はどれだけ広大でしょうか。
貴方次第で、ここは天国にも地獄にもなりえるわけです。
そう思えば、「自分ひとりくらい」なんて考えは起きないでしょう。