There Are No Gods Among Us
先週末、イーロン・マスクは自らを抑えることが出来なかった。彼は先週述べた自身の見方を強め、更なる混乱を引き起こした。この一連の話はかなり複雑になってきているが、以下に先週末以前の状況を簡単に示す。
- イーロン・マスクはビットコインが生まれてから最初の10年以上ビットコインを保持していなかった。
- テスラがバランスシートの保有資産として2021年の第一四半期に15億ドル分のビットコインを購入したことを発表した。また、テスラ車購入の支払方法の一つとしてビットコインを受け入れ始めた。
- SpaceXおよびイーロン・マスクがビットコインを購入したという噂が後に浮上した。
- テスラが市場の流動性をテストするために保有するビットコインのうち10%を売却したことを最近の収支報告会議で発表した。
- 先週イーロン・マスクはエネルギー消費に関する懸念のためテスラがビットコインによる支払いを今後受け入れないことを述べる声明を投稿した。
- テスラはビットコインを売却しておらず、その予定もないことを明らかにした。
さて、話を進める前にいくつかの事項を理解することが必要だ。イーロン・マスクがテスラの資産としてビットコインを購入することを発表した時、ビットコインのコミュニティはイーロン・マスクを快く受け入れた。正直、「受け入れる」という言葉は少し控え目すぎるかもしれない。ビットコイナーは狂喜乱舞していた。ミームの王がまた一人抵抗することをやめ、ビットコインの世界征服への行進に加わらなければならないということに気づいたのである。この新しい展開をどうして喜ばずにいられようか。
さて、凄いことが起きたわけだ。
先週末、ツイッターが大混乱に陥った。イーロン・マスクは土曜日の朝一番にDogecoinの技術的効率を向上させる方法を提案した。
ツイート)理想的にはDogecoinはブロックタイム(訳者注:ブロックを一つ生成するのにかかる時間)を10倍短く、ブロックを10倍大きく、手数料を100倍安く出来ると良い。そうすれば文句なしに勝つだろう。
暗号通貨業界に以前からいる人にとって、この提案はすぐさまたくさんの危険信号の引き金になった。これはマスクがDogecoinに人気があることを理解していなかったということかも知れない。Dogecoinに技術的な問題があるという彼の発言は、ほとんどのブロックが取引でいっぱいになりかけてさえいないことを彼が知らないということを明らかに示している。また、この発言はブロックサイズ(ブロックチェーン上のブロックが単一で処理することが出来る取引の量を示す単位)を向上させるべきだという新参者によくあるがしかし不正確な提案だったのかも知れない。
ブロックチェーンのコミュニティでは何年も前にすでにブロックサイズに関して熱い議論が交わされた。その結果、ブロックサイズを小さく保ち、ブロックチェーンのレイヤー2にスケーリングの方策を詰め込むことが勝利の戦略になった。しかし、このような馬鹿げたことでもまだ足りないのか、マスクはもう一度逆鱗に触れずにはいられなかったようだ。
日曜日、イーロン・マスクはツイッターで、私の友人ピーター・マコーミック(Peter McCormick)のそれなりによく考えられ、理性的だったスレッドに以下のコメントを残した。
ツイート)このスレッドみたいに不快なスレッドを見ると、Dogeに全部突っ込みたくなる
ただ馬鹿なことを言うのと、ピーターのようにビットコインのコミュニティで尊敬され、好かれている人物にその馬鹿なことを直接言うのとではわけが違う。イーロン・マスクはそこらの逆鱗に触れていたのではなく、世界で最も強い関心を持つ、情熱的な支持者の逆鱗に触れていたのである。そして、ビットコインコミュニティは期待を裏切らなかった。
ビットコインのコミュニティが世界で最も裕福な人物の一人に憤慨し、ツイートやミームなどで避難し始めると、イーロンは態度を硬化させた。彼はそうせずにはいられなかったようだ。彼はビリオネアとして答えを持っているということを示さずにはいられなかった。庶民が彼よりもカネについて理解をしていることなどあり得ない。この不安感は彼に資格主義的なツイートをさせるに至った。
ツイート)やあ暗号通貨の「専門家」さんたち。PayPalって聞いたことあるかな?もしかすると、僕は君たちが思っているよりもお金のことについて理解はしているかもしれないよ。
当然、ビットコインの庶民たちはただ感動しなかっただけでなく、この結果オンラインの論戦はさらに加熱した。世界のエリートの一人がハンドルネームのアカウントに炎上させられ、アマチュアのミームの王にミームでボロボロにされた。私の個人的なお気に入りはワタクシの”double doge dare”である。
ツイート)やれるものならやってみろ!
ここまで見れば今回の出来事が十分わかるだろう。この展開の裏で、ビットコインの価格は大暴落していた。まず始めに50,000ドル以下に落ちた。そして47,000以下に落ちた。そして45,000ドル以下に。最終的に42,000ドル付近で底をつくように見えた。この最中、ある考えが私の頭を離れなかった。
ツイート)私たちは国民国家や中央銀行を待ち望んでいたが、ツイッターアカウントを持つ感情的なビリオネアがやってきた。
今回の出来事は世界で最も裕福な人間がビットコインに直接的な攻撃を仕掛けるのと同じようなものだ。先週、彼はプルーフオブワークのマイニングの正当性に疑問を呈し、ビットコインネットワークのセキュリティを突っついた。先週末、彼はビットコインを取り巻くコミュニティに対してずさんな批判をしたり、ビットコインの有用性を突っついたりした。これらは巧妙な攻撃でもなければ緻密に計画された攻撃でもなかった。それらは深刻な影響を及ぼす、公のナラティブを利用した攻撃でしかなかった。
しかし最終的には、これらはすべて無駄な努力になる。イーロン・マスクは何週間か前にビットコインコミュニティに素早く受け入れられた。もし今のように馬鹿な行いを続けるのであれば、受け入れられたときと同じくらいの素早さでコミュニティを離れることを求められるだろう。その人が誰であるか、どの学校を卒業したか、どれだけのカネを持っているか、両親が誰だったかなどということにビットコイナーが関心を持っていないということが理解されていない。彼らが気にしていることは、その人がビットコインを理解していてビットコインの世界的な受容を目指しているか、否か、である。
コミュニティに参加しようとしているのであれば歓迎される。我が家のようにくつろいでくれ、である。それを理解せずに敵対しようとすれば、ビットコイナーはビットコインネットワークとビットコインそのものにちょっかいを出すことを一切許さない。イーロン・マスクの身に今起きていることは正にこれである。彼が逆鱗に触れたことで「サイバードラゴン」が怒りをあらわにしたということだ。ところで、おそらくだが、彼はビットコインコミュニティに絶えず叱責を受け続けている状態でビットコインを保持し続けるにはプライドが高すぎる。